科学技術振興機構(JST)、Science Portal(サイエンスポータル)を公開

科学技術振興機構(JST)がScience Portal(サイエンスポータル)を公開した(2006-06-07)。

最新の研究成果、日々の科学技術に関するニュースのほか、研究者のインタビューやレポートを、随時、携帯情報端末にダウンロードできる動画も交えて掲載し、科学に興味を持つ方が、知的好奇心を満足させながら、日本の科学技術の新しい流れ、方向を感じ取れる情報を毎日発信します。

「科学技術の今を伝える -サイエンスポータル- 公開」(「科学技術振興機構報」第300号、2006-06-06)

と謳い、インタビュー記事やニュースが掲載されている。また、JSTが有する研究開発支援総合ディレクトリ(ReaD)や研究者人材データベース(JREC-IN)、あるいは科学研究費成果公開サービス(国立情報学研究所)、科学技術振興調整費成果報告書データベース(文部科学省)、厚生労働科学研究成果データベース(厚生労働省)との連携が図られ、これらのデータベースから一部の情報を表示している。

まずは意欲的な取り組みとして評価すべきだろう。

だが、

構築・運営は、技術スタッフ3人、コンテンツスタッフ2人で行い、サイト開設までにかかった費用は約4000万円。今年度中にさらに3000?4000万円ほどかけて改善していく。

と、ITmedia Newsが伝えるように、Science Portal(サイエンスポータル)に要している費用は多額とはいえないものの、科学の広報経費としては潤沢ともいえる。これだけの経緯をかける以上は、よりよいサイトづくりを強く意識し、改善に努めてほしい。期待を込めて、現時点で気づいた点をいくつか指摘しておこう。

まず最初にScience Portal(サイエンスポータル)というサイトのターゲットを明確にする必要があることを指摘しておきたい。前出の「科学技術振興機構報」によれば、Science Portal(サイエンスポータル)は次の3点を目的としているようだ。

・科学に興味を持っていただくために

・研究者や技術者が有用な情報に効率よくアクセスするために

・科学技術の流れを知るために

正直にいって、この3点を1つのサイト上で並行して実現することは、そう簡単ではない。特に一般の市民に対するサイエンスコミュニケーションと研究者に対する情報提供の両立はなまやさしいことではないだろう。実際、現時点でのScience Portal(サイエンスポータル)のトップページは明らかに一般市民に対するサイエンスコミュニケーションが全面に打ち出されており、研究者向けのポータルという性格は弱い。トップページのデザイン上、前者の要素が大きく扱われ、後者はページの右側に押し込められていることに明らかだろう。それでは、トップページを一般市民向けと研究者向けに分割すればよいのかというと、それには賛成したくない。一般の市民と研究者とを分離させることなく、いかに一つの画面で情報提供を実現できるか、5名のスタッフの工夫を期待したい。

もう一点、情報提供のあり方、その基本的な哲学について述べておきたい。Science Portal(サイエンスポータル)の特徴は、上でふれたようにJSTや他の機関が有するデータベースから情報を取り込んできて集約するという情報のアグリゲーションが一つの基本原理となっているところにある。これはこれで便利である。ポータルとしての一つの方向性としては正しいだろう。だが、Science Portal(サイエンスポータル)は一方的な情報発信拠点にとどまっていいのだろうか。サイエンスコミュニケーションの拠点をめざすのであれば、ここに集約された情報が二次的、三次的に利用される方向をめざすべきではないだろうか。つまり、情報を自由に配信するディストリビューションである。具体的には、たとえばRSSを使い、Science Portal(サイエンスポータル)に集約された情報を第三者が自由に利用できるようにすることが考えられるだろう。もちろん、RSSだけが唯一の解でもなければ、最善の解でもない。可能なことは数限りないはずだ。スタッフの方々には失敗を恐れることなくさまざまな試みにチャレンジしてほしい。

なお、Science Portal(サイエンスポータル)の構築にあたっては、日本学術会議会長の黒川清さんを中心とする科学技術ポータルサイト委員会が結成され、検討にあたったという。同委員会がどのような顔ぶれで構成され、公開に至るまでどのような議論がなされたのか、その経緯をぜひ公開してほしい。委員会の議事録を公開することは、今後のサイエンスコミュニケーションや研究者への情報提供をより活発にすることだろう。

・Science Portal(サイエンスポータル)

http://www.scienceportal.jp/

・科学技術振興機構(JST)

http://www.jst.go.jp/

・「科学技術の今を伝える -サイエンスポータル- 公開」(「科学技術振興機構報」第300号、2006-06-06)

http://www.jst.go.jp/pr/info/info300/

・「「研究者が欲しい情報を集約」――サイエンスポータル始動」(ITmedia News、2006-06-06)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0606/06/news096.html

・「科学技術振興機構、サイエンスポータルサイト設立--研究者から子どもまで」(MYCOMジャーナル、2006-06-06)

http://journal.mycom.co.jp/news/2006/06/06/006.html

・「科学技術の情報網羅したサイト・科技振興機構が開設」(日本経済新聞、2006-06-06)

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20060606STXKC053406062006.html